モーリシャス沖の貨物船座礁に伴う油流出事故について
モーリシャス沖の油流出事故について
2020年8月9日、アフリカ南部の島国のモーリシャス沖で大型貨物船が座礁し、
重油約1000トン以上が海洋に流出してしまったことが明らかになりました。
モーリシャスは世界有数のリゾート地で観光業や漁業も盛んです。
重油が流出した場の近隣には鳥獣保護区もあり、
環境や産業への影響も懸念されています。
またモーリシャス沖には美しいサンゴ礁も多数あり、
そちらへの影響や保護方法の検討も行われているようです。
現在の8月11日時点ではモーリシャス沖に流出した重油の回収を行っていますが、
全ての重油の回収の目処は立っていないそうです。
参考:https://www.nikkei.com/article/DGXMZO62476490Y0A800C2EA5000/
油が海洋へ流出した際の影響
動植物への悪影響
重油が海洋へ流出してしまうとそこの海中に住む生物への悪影響がもちろんありますが、
その近辺に住む生物や生態系自体にも影響を与える可能性があります。
例えば魚を捕食する鳥に重油が付着してしまうと上手く動けなくなってしまったり、
毛づくろいの際に重油を摂取してしまい体内へのダメージもあります。
重油が付着してしまった鳥類は人間による浄化や治療をしない限り、
命を落としてしまう可能性が非常に高くなってしまいます。
モーリシャス沖の場合、鳥獣保護区が近隣にあるため、
重油流出による鳥類への影響を心配する声も上がっています。
また重油が水面を覆ってしまうと太陽光が水中まで届きにくくなり、
海洋植物や植物プランクトンが光合成を行えなくなってしまいます。
そうなると海洋植物や植物プランクトンを餌にする生物にも影響がある、といったように
その辺一帯の生態系に悪影響を与えてしまいます。
モーリシャス沖でも重油の流出による生態系への影響が懸念されています。
産業への悪影響
「モーリシャスといえば海」といっても過言ではないほど、
モーリシャス沖の海は美しく観光資源となっています。
そのモーリシャス沖が重油で汚染されてしまうとなると、
モーリシャスの観光産業への影響はとても大きいと予想されます。
またその近辺で生活する人々への影響もあります。
当然ながらそこで漁業を行っていた場合、
漁業を行うことが困難になってしまいます。
モーリシャス沖では漁業がとても盛んであり、
輸出総額の10%が魚類であった年もあった程なので、
重油流出による悪影響が懸念されています。
工場などの施設でも海水を利用している場合もあり、
その場合重油を取り込んでしまうことで動作に影響が出てしまうこともあります。
また実際に悪影響が出ていなかったり浄化が終わった後でも、
風評被害が発生してしまうケースも過去に起きています。
モーリシャスの場合、モーリシャス沖で取れた魚や名産のサトウキビ等、
汚染の風評被害が出る恐れがある点も心配されています。
油が海洋へ流出した際の対処方法
モーリシャス沖のように海洋に重油が流出してしまった場合、
陸上とは異なり原位置での浄化は非常に困難です。
よって拡散を抑えたり重油を集める為にオイルフェンス等を設置した上で、
オイルマット等で重油を回収する、というのが基本的な対処法になります。
しかし流出した重油の量が多い場合全て回収することが非常に難しい為、
油中和剤を使用することがあります。
油中和剤は油を分散させ細かくすることで、
自然にいる微生物によって分解しやすい状態にすることができます。
しかし油を無くすわけではなく細かくするだけなので自然に浄化を委ねるしかなく、
また油中和剤の成分自体が環境や生物に悪い可能性がある、
という点には注意が必要です。
1997年のナホトカ号
過去には日本の近海でも、
今回モーリシャス沖で発生した重油流出事故と類似した事故がありました。
1997年に日本海沖でロシアのタンカー船ナホトカ号から、
約6000トンの油が流出するという事故が起きました。
その際は島根県から石川県にかけてとても広い範囲に重油が到達し、
一帯の環境や生物を汚染し、人々の生活にも大きな影響を与えました。
今回の起きてしまったモーリシャス沖での油流出事故も
いち早く事態を収束させなければなりません。
今回起きたモーリシャス沖での事故やナホトカ号を教訓に、
また事故を起こさない為の対策や、
起きてしまった際の連絡網や対処方法等、
最適な方法を常に見直し整備していく必要があります。