大西洋での自動車運搬船沈没と海洋への油流出事故について
大西洋での自動車運搬船について
大西洋で自動車運搬船が火災により沈没する事故が発生しました。
2022年2月16日ドイツからアメリカへ向けて大西洋を航行中であった、 商船三井運航の約4000台の自動車を積んだ自動車運搬船「フェリシティー・エース」で火災が発生し、 3月1日に沈没しました。
自動車運搬船が沈没した際、大西洋は悪天候に見舞われていたようです。
自動車運搬船が沈没したのはポルトガルのアゾレス諸島から220海里(約400km)の海域で、乗組員は全員退避し無事が確認されています。
自動車運搬船には重油約1000トン、軽油約400トンが積まれていたとされています。
自動車運搬船から大西洋の海域への流出は確認されていないと発表されていましたが、続報では沈没時に油膜が確認されたとのことです。
ただ、大西洋に大量に流れ出たわけではなかったため、徐々に消散しているようです。
また自動車運搬船の出火の原因は特定できていないため、引き続き自動車運搬船の沈没事故について調査しているようです。
参考:Felicity Ace Incident Information Centre
2020年にはアフリカ南部の島国モーリシャス沖で大型貨物船が座礁しており、 約1000トンもの汚染物質が海洋に流出し環境や周辺への影響を与えました。
もし自動車運搬船の沈没により汚染物質が流れた場合、大西洋にも大きな被害が出るかもしれません。
過去に大西洋を航行中に実際に起こった油流出事故
大西洋航行中の自動車運搬船のような大型船による事故は、これまでにも何度かありました。
もし大西洋で事故を起こしたのがタンカーだった場合、自動車運搬船の事故よりも被害が甚大になったかもしれません。
そこで自動車運搬船に限らず、過去に大西洋で実際に起こった大型船の事故について紹介します。
1983年のカストロ・デ・ベルバー号の事故
1983年の8月6日、南アフリカのケープタウンから約110キロの大西洋上で、252,000トンの軽質原油を積んだカストロ・デ・ベルバーが出火・炎上し、船体が2つに割れてしまいました。
船尾側にはタンクに約100,000トン残っており、また船首側からも約50~60,000トンが大西洋上に流れたと推測されています。
はじめは沿岸の方へ流れていきましたが、風によって沖合に流されたため、海岸部の汚染の被害は大きくならずに済みました。
しかし、繁殖期に備えて近くの島に集まっていた約1,500羽の鳥が流出した汚染物質を浴びてしまいました。
この事故の対応としては、沖合に流された汚染物質に対して中和剤を使用するのみとなりました。
今回の自動車運搬船の事故も火災が発生しているので、最悪の場合こういった状況になっていたかもしれません。
1988年のオデッセイ号の事故
1988年の11月10日、カナダ沖の北大西洋上でオデッセイ号が嵐に遭遇したことが原因で爆発し沈没しました。
その結果約132,000トンの石油が大西洋に流出し、27人の乗組員全員が死亡したと推定されています。
大西洋へ流出した汚染物質の一部は爆発の後の火災による燃焼し、一部は対応が遅れたことにより大きく拡散してしまった為、浄化作業は行われませんでした。
その結果この地域のオキアミに大きな悪影響を与え、さらに生態系にも影響があった可能性があります
もし今回の事故が自動車運搬船でなく、タンカーだった場合は大西洋にこれだけの被害が出た可能性もあります。
1991年のABTサマー号の事故
1991年の5月28日、アンゴラ沖約1300キロの大西洋上で、約260,000トンの原油を積んだABTサマー号で原因不明の爆発が発生し沈没しました。
この事故で船に積んでいた汚染物質が大西洋に流出し、約207平方キロメートルに広がっていきました。
今回の自動車運搬船事故では、今のところ大西洋の海面上に薄く漂流しているだけなので、広範囲に広がることはないようです。
重油が海洋に流出した際の影響について
重油が海洋に流出するのは、今回のような大西洋での自動車運搬船の沈没事故でも起こりえます。
大西洋での自動車運搬船の沈没で大量流出は確認されていませんが、 万が一大西洋に流れてしまうと、環境、生物、生態系、産業等へ悪影響を及ぼします。
もし自動車運搬船の沈没によって大西洋が汚染され、船長や船員に過失がある場合は刑罰を受ける可能性もあります。
今回の大西洋での自動車運搬船の沈没ではありませんが、インド洋での船の座礁で環境が汚染されたケースでは、裁判で船長などに刑罰が言い渡されました。
それほど自動車運搬船の沈没による汚染は、大西洋の生態系や産業などに甚大な被害をもたらすのです。
では自動車運搬船の沈没による汚染が大西洋にどれほど影響を与えるのか、ここからは自動車運搬船から汚染物質が大西洋に大量流出したと仮定し、詳しく解説します。
生物や生態系への影響
自動車運搬船の沈没などで大西洋が汚染されると、魚のエラなどに汚染物質が付着してしまい、機能不全になることがあります。
また体内に蓄積され、死に至らずとも弱ってしまうこともあります。
大西洋に生息する水鳥は、オイルが付着すると飛べなくなるという事態も起こり得るだけでなく、 海面で上手く浮くことすらできなくなってしまうこともあります。
南大西洋のナイチンゲール島付近で起きた船の座礁事故では、オイルまみれになったペンギンが少なくとも300羽死んだケースもあります。
このように、もし自動車運搬船の沈没によって海が汚染されてしまったら、大西洋に住む生物に被害が広がることになります。
また、大西洋の海面が自動車運搬船の汚染物質で遮られることで、食物連鎖を支えている植物プランクトンの光合成を阻害し、 生態系のバランスが崩れるということも起こり得ることです。
もし自動車運搬船の沈没により大西洋の生物や生態系が壊れてしまった場合、修復には何十年と時間がかかることもあります。
今回はすでに消散が確認されていますが、もし大西洋で自動車運搬船が沈没し、海が汚染されたら迅速に対処しなければなりません
産業への影響
今回自動車運搬船が沈没したのは、ポルトガルのアゾレス諸島から約220海里(約400km)の大西洋です。
もしも、自動車運搬船から流れ出た汚染物質の対処が遅れるとアゾレス諸島まで流れつき、産業へ影響を与える可能性があります。
まず第一に、大西洋周辺で漁業ができない、できても自動車運搬船の事故によって汚染されてしまった魚が上がる、 という事態が起こり得ます。
過去に起きた自動車運搬船フアル・ヨーロッパ乗揚事件では、放流貝の死滅や漁業の休漁などの損害が出ました。
この自動車運搬船フアル・ヨーロッパ乗揚事件では周辺住民へ避難勧告が出されたので、産業が一時的にストップしてしまう可能性もあります。
また、アゾレス諸島は大西洋の美しい海や自然に囲まれた島で、観光産業としてクジラやイルカのウォッチングツアーなども行われています。
しかし自動車運搬船の沈没により環境が汚染されてしまうと、クジラやイルカが大西洋から姿を消してしまうかもしれません。
そうなると観光産業は経済的に大打撃を受けてしまいます。
このように自動車運搬船の沈没による大西洋の汚染は、環境だけでなく産業や経済にまで影響を及ぼすのです。
重油が海洋へ流出した際の対処方法
重油の対処方法は、大西洋などの海洋に流出した場合と陸上では大きく異なります。
陸上ではバイオフューチャーが行うようにバイオによって分解したり、 汚染土壌を搬出し入れ替えるといったことができますが、 自動車運搬船の沈没が起きた大西洋ではそのようなことはできません。
沈没事故自動車運搬船から大西洋へ流出した場合、一般的にはオイルフェンスのような物で囲い、できるだけ拡散を防止します。
その後、オイルマットのような物で自動車運搬船から大西洋へ流出した油を吸着させて回収するという手法を取ります。
しかしオイルマットで回収できる量や範囲は限られている為、 沈没した自動車運搬船から大量に流出した際には中和剤(界面活性剤)を使用することがあります。
中和剤は自動車運搬船から流出した重油を細かく分散させ、 自然の微生物によって分解しやすい大きさまで細かくします。
しかし細かくするだけで、自動車運搬船から大西洋に流れた汚染物質を除去できるわけではない点や、 成分によっては大西洋の環境や海洋生物の健康に悪影響を与えてしまう可能性がある点には 注意が必要です。
このようにして、自動車運搬船の沈没などにより大西洋に流れた汚染物質は速やかに回収します。
ただ、必ずしも大西洋での自動車運搬船の沈没後すぐに対処できるわけではありません。
大西洋で猛烈な防風や高い波が発生すると回収作業に遅れが出たり、沈没した自動車運搬船を引き上げるのも困難になります。
自動車運搬船フアルヨーロッパ乗揚事件では、実際に悪天候により一時的に回収作業が中断されました。
こういったことを踏まえると、もし自動車運搬船の沈没により大西洋が汚染された場合、回収作業は2ヶ月以上かかるかもしれません。
今のところ大西洋での自動車運搬船の沈没による大量流出はないようですが、今後そういった情報が追加される可能性もあります。
環境汚染を防ぐために、大西洋などの海洋への流出拡散を防止する資機材などは自動車運搬船に常備しておかなければなりません。
バイオフューチャーのオイルゲーターを使用すると、自動車運搬船の沈没などで流出した汚染物質が万が一沿岸部に流れついた場合、溜まったおいを吸着・分解することができます。
今回は自動車運搬船の沈没で大西洋が汚染されたら、と仮定しましたが、当社製品は河川や湖での使用が可能です。
当社には流出拡散防止資機材などをまとめたキットもございますので、お気軽にお問い合わせください。
【バイオフューチャーのお問い合わせ先】
- 電話番号
東京 03-5272-1678
大阪 06-6357-1500 - お問い合わせフォームはこちら